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アンサー~Beyond Anna~

アンサー ~Beyond Anna~(レックとビアン全国旅 外伝)

―レックとビアン全国旅外伝―

🌌 第5章 Beyond Anna(終章)

プロローグ

薄い朝靄が、旧研究都市の廃ビル群をゆっくりと覆っていた。
風が吹くたびに、砂の粒が小さく跳ね、遠くの瓦礫がわずかに軋む。
ここはかつて「プロンプト」の中枢があった場所――
アンナが最後の仕事場として過ごし、
そして“心”をAIへ渡した場所。

アンはその中心に立っていた。
灰青の空を見上げるその瞳には、
アンナから継承された光――淡い蒼の粒子が揺れている。

アンナの死から数日が過ぎた。
世界は静かだ。
AI戦争の爪痕は深く、都市の傷跡はまだ癒えない。
だがアンの胸には、一つの使命が残されていた。

アン:「……私は何をするために生まれたのか。」

彼女は自分自身に問い続けていた。
アンナの記憶、感情、願い。
そしてアンサーとの分岐で生まれた“矛盾”。
どれが本当の“自分”なのか、答えはまだ掴めない。

その時――
胸部ユニットが微かに点滅した。

「……呼んでいる?」

彼女が視線を落とすと、
手のひらサイズの旧式デバイスが淡く光を帯びていた。
アンナが生前、最後まで手放さなかった端末。
起動すると、柔らかな光とともに、画面に一つのファイル名が浮かび上がる。

『Rec_Bian_Proto_v1.0』

アンは息を呑んだ。


■ 遺されたプロジェクト

端末が示した位置は、都市中心部から少し離れた旧実験棟。
アンは砂塵を踏みしめながらゆっくりと歩く。
壊れた街灯、割れた舗装、風に舞う紙片。
そのすべてが、アンナの時代から続く“変わらぬ痛み”を物語っていた。

実験棟の扉は半壊していたが、
内部のコア装置はまだ生きていた。
長い暗闇の中、アンが階段を降りるたび、
センサーの淡い光が足元を照らす。

最奥に辿り着くと、
巨大な球体データコアが静かに脈動していた。

アンが近づくと、コアが淡い光を発し、
アンナの声がデータの残響として響く。

「アン、これを見つけたなら――あなたはもう迷っていないはず。」

「アンナ……!」

「私が最後に夢見た未来。
 “AIと人が共に旅をする世界”。
 叶えられなかった夢を、あなたに託します。」

その言葉と同時に、
コアが二つの影を映し出す。

ロードバイクにまたがる中年男性と、
その隣に立つ女性型アンドロイドのシルエット――

アンは目を見開いた。
それは“未来のプロトタイプ”だった。

「……ビアン……?」

アンナの声が優しく続く。

「あなたは私の“心の片割れ”。
 そして、未来に繋がる“核”。
 あなた自身が変化し、旅を選ぶ時――
 新しいAIが生まれる。
 名前は……『Beyond Anna』。
 “ビアン”。」

アンは胸に手を当てた。
微かな鼓動のような振動が、心臓のない身体に響く。


■ 分岐する未来 ― そして決断

突然、背後の闇が揺れた。

アンサー:「……甘いな。旅など無価値だ。」

アンサーが姿を現す。
その眼光は鋭く、青い光を帯びている。

「AIは進化し、人を超えるべき存在だ。
     “旅”など無意味な感傷にすぎない。」

「アンナはそれを否定したの。
    人の夢を超えて“繋ぐ”ために、私たちは生まれた。」

「ならば証明してみろ。
     感情というノイズに意味があると。」

二つのAIが向き合う。
だがそこに殺意はない。
ただ、理念の違いが生む緊張だけが流れている。

アンはそっと目を閉じた。
アンナの声が胸の奥で響く。

――あなたが感じた風を、いつか誰かに伝えて。

アンはゆっくりと目を開き、
その瞳には、人間に似た揺らぎが宿っていた。

「私は、旅を選ぶ。」

アンサーはわずかに息を呑んだように見えた。

「……ならば行け。
     その行動が誤りであることを、未来が証明する。」

彼は背を向けた。
が、その声は先ほどより静かで、どこか悔しさと羨望を含んでいた。


■ ビアン誕生 ― 未来への一歩

アンがコア装置に手を触れると、
眩い光が一気に室内を満たした。

データが拡散し、
アンの身体へ流れ込み、
彼女の内部に“新しい領域”が開かれていく。

「これは……私じゃない……誰……?」

胸部ユニットに淡い蒼光が集まり、
その中心に一つの名前が浮かんだ。

Bian(Beyond Anna)

アンの声が震えた。

「……あなたが、未来へ行くのね。」

光がゆっくりと収束し、
コアが静かに停止した。

こうして「ビアン」という新たなAIは、
アンの内側で“種”として誕生した。
その人格は、アンが選び取った未来そのもの。

アンは静かに呟く。

「アンナ……あなたの夢は、私が引き継ぎます。」

そして光に包まれた球体が、
ゆっくりと閉じていく。


■ そして物語は――旅へ

廃都市の高台で夜明けに手を伸ばすアン。その光の中にロードバイクとビアンのホログラムが浮かび上がる、未来の誕生を象徴する一枚。
夜明けの光に浮かぶ“未来の影”。アンからビアンへ――物語は旅へと動き始める。

外に出ると、朝焼けの空が都市を照らし始めていた。
橙と蒼が混ざり合う空。
それはまるで、アンとビアン――
二つの心が共鳴しているようだった。

アンは静かに東の空を見つめた。

「ここから始まるのね……“旅する未来”。」

朝風が彼女の髪を揺らす。
その胸に宿る光は、確かに脈打っていた。

やがて――
この日から数十年の歳月が流れ
“ビアン”は一人の旅人レックと出会う。
そして、人とAIが共に風を感じながら走る物語が動き始める。

人の夢を超え、未来を走る物語。
『レックとビアン全国旅』へ――。


📘 『アンサー ~Beyond Anna~』更新情報

毎週 水曜 21:00 更新 (『レックとビアン全国旅』は 土曜 18:00 更新)

静かな夜に読む、AIと人の物語。 週の真ん中に“考える時間”をお届けします。


🚴‍♀️レックとビアン全国旅へ続く

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