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スカイロード 第8話:空と花の青 ― 茨城リンク

創作SFノベル

プロローグ

福島リンクを抜けた青いレールは、磐梯山を離れ、南東へ向かっていた。

夕暮れの山々が少しずつ遠ざかっていく。

その先には、広い空が見えていた。

アリスは前方を見つめた。

「……山がなくなってきたな」

「そうね。茨城リンクに入ったから」

アリーが答える。

「今度は何がある?」

「海よ」

「海か」

アリスの目が輝く。

「福島では湖だったからな。今度は本物の海ってわけか」

「それだけじゃないわ」

「まだあるのか?」

「花の景色もあるわよ」

「花?」

アリスが首をかしげる。

「ひたち海浜公園」

「公園に花があるのか?」

「季節によって、景色が大きく変わる場所よ」

アリスは前を向いた。

「じゃあ、まずは花探しだな」

青いレールは、広い空の下へ伸びていった。


海の近くへ

茨城リンクを進むにつれて、景色が変わっていく。

山は少なくなり、平らな大地が広がっていた。

遠くには、青い水平線が見えている。

アリスは速度を落とした。

「……海だ」

「ええ」

「福島の猪苗代湖とは、やっぱり違うな」

「どこが違う?」

アリスはしばらく考えた。

「広すぎる」

「それだけ?」

「うん。それだけで全然違う」

眼下には、どこまでも続く海。

その向こうには、空。

水平線で二つの青がつながっている。

アリスはしばらく黙っていた。

「……空と海の境目って、あんなに遠いんだな」

「そうね」

「スカイロードも、どこまで続いてるのかわからないけど」

アリーが笑った。

「海と似ている?」

「ちょっとだけな」


ひたち海浜公園へ

青いレールは海岸近くを進み、そのままひたち海浜公園の上空へ入っていった。

眼下には、広い緑の大地が広がっている。

木々。

草原。

そして、その先に一面の青が見えた。

「……なんだ、あれ?」

アリスが身を乗り出す。

「ネモフィラよ」

「ネモフィラ?」

「春になると、青い花が一面に咲くの」

アリスは目を丸くした。

「花なのか、あれ?」

「そうよ」

「……空みたいだな」

丘いっぱいに広がる青。

その向こうには、本物の空が広がっている。

地面と空。

二つの青が重なって、境目がわからなくなっていた。

アリスは思わずペダルを止めた。

「すげぇ……」


空と花の境目

スカイロードは、ネモフィラの丘をゆっくりと横切っていく。

風が花の間を通り抜ける。

小さな青い花が、一面に揺れていた。

「これ、どこまで続いてるんだ?」

「丘の向こうまでよ」

「空とつながって見えるな」

「そうね」

アリスは空を見上げ、それから下を見る。

「上も青」

もう一度、前を見る。

「下も青」

「面白いでしょう?」

「うん」

アリスは少し笑った。

「福島では、水の色を追いかけたけど」

「ええ」

「茨城では、青を追いかけることになりそうだな」

アリーは何も言わず、前を見た。

二人のタイムサイクルは、青い花の上を静かに進んでいった。


季節で変わる景色

少し進むと、ネモフィラの丘を抜けた。

その先には、別の景色が広がっている。

「同じ公園なのに、雰囲気が違うな」

「季節によっても変わるわ」

「花が変わるのか?」

「そう。春にはネモフィラ。秋にはコキアが赤く色づくの」

アリスは振り返った。

「赤?」

「ええ。今とは全然違う景色になるわね」

「じゃあ、同じ場所でも季節が変わったら別の場所みたいになるんだ」

「そういうことね」

アリスは少し考えた。

「福島の五色沼も時間で色が変わったけど」

「ええ」

「ここは季節で景色が変わるんだな」

「よく気づいたわね」

「旅してると、そういうのがわかってくる」

アリーが笑った。

「少し旅人らしくなってきたじゃない」

「少しだけな」


海と花

公園を抜けるころには、再び海が見えてきた。

青い海。

青い空。

そして、遠くに広がる花の丘。

アリスは三つの景色を交互に見た。

「海と花が同じ場所にあるって、不思議だな」

「そうね」

「福島は山と湖だった」

「ええ」

「茨城は海と花か」

アリーは頷いた。

「場所が変わると、景色の組み合わせも変わるのよ」

アリスは笑った。

「日本って、思ったよりいろんな景色があるんだな」

「まだまだあるわよ」

「じゃあ、全部見ないとな」

「全部?」

「全部」

アリーは小さくため息をついた。

「また欲張りになってきたわね」

「旅だからな」

「その言葉、また使ったわね」

二人は顔を見合わせて笑った。


夕暮れのひたち海浜公園

夕方。

太陽が少しずつ西へ傾いていく。

昼間は鮮やかだった花の丘も、柔らかな光に包まれていた。

ネモフィラの青は、少しずつ淡い色へ変わっていく。

海にも夕日の光が伸びていた。

アリスはペダルを止めた。

「……朝とは全然違って見えるんだろうな」

「ええ」

「じゃあ、ここも何回も来たくなるな」

「そうかもしれないわね」

アリスは花の丘を見つめた。

「青い花を見て、青い海を見て」

少し間を置いて、

「最後は夕日の海か」

アリーは静かに頷いた。

「今日も、いろんな青を見たわね」

アリスは笑った。

「福島では色が変わる水」

「そして茨城では、空と花と海」

「なんか、つながってるな」


茨城リンクの終端

夕暮れが深くなっていく。

ひたち海浜公園の緑が、少しずつ影の中へ入っていく。

その向こうに、海が広がっている。

そして遠くには、次の青いレールが見えていた。

アリスが前を見る。

「次は?」

アリーが答える。

「千葉リンク」

「千葉か」

「海沿いの景色もあるわ」

「また海?」

「でも、今度は違う海よ」

アリスは少し笑った。

「日本の海って、全部同じじゃないんだな」

「そういうこと」

アリスは最後に振り返った。

遠くに広がる海。

その手前に広がる公園。

そして、夕暮れの空。

「……ひたち海浜公園、面白かったな」

「ネモフィラが気に入った?」

「うん」

「海じゃなくて?」

アリスは少し考えた。

「どっちも」

「欲張りね」

「旅だからな」

アリーは笑った。

「それ、もう旅の合言葉になってるわね」

二人のタイムサイクルが、再び青いレールの上を走り始める。

アリスは前を向いた。

「次は千葉か」

「ええ」

「今度は何色かな?」

アリーは少しだけ笑った。

「それは、行ってからのお楽しみ」

青いレールが、夕暮れの空へ伸びていく。

その先には、まだ見ぬ千葉の景色が待っている。

二人は、新しい空の道へ走り出した

🌤 スカイロード公式設定

『スカイロード』は、西暦2125年を舞台にした未来SFサイクリングストーリーです。作品に登場する未来技術や世界観、登場人物などを「公式設定ページ」にまとめています。物語をもっと楽しみたい方は、ぜひご覧ください。

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