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スカイロード 第6話:山々を越える川 ― 山形リンク

サイクリングストーリー

プロローグ

宮城リンクを抜けた青いレールは、松島湾を離れ、少しずつ内陸へ向かっていた。

眼下に広がっていた海が遠ざかり、代わりに緑の大地が広がっていく。

その先には、大きな山々が見えていた。

アリスは前方を見つめた。

「……山か。」

「そうよ。」

アリーが答える。

「ここからが山形リンク。」

「宮城では海だったのに、今度はいきなり山なんだな。」

「山形には、海とは違った景色があるわ。蔵王、それから最上川。」

「山と川か。」

アリスは前方を見た。

「なんか、すごく山形っぽいな。」

二人の前で、蔵王連峰が少しずつ大きくなっていった。

蔵王を見上げて

近づくにつれて、蔵王の山々がはっきりと見えてくる。

深い緑に覆われた山肌。

谷間を走る道路。

その向こうには、さらに山々が重なっている。

アリスは速度を落とした。

「……高いな。」

「そうね。」

「宮城から見ていたときより、ずっと大きい。」

スカイロードは山そのものを登るのではなく、山の景観を楽しめる高さを通っている。

アリスは山頂を見上げた。

「上から見る山って、なんか変な感じだな。」

「どうして?」

「いつもなら山は下から見るだろ? でもここからだと、てっぺんが近い。」

しばらく山を見つめていたアリスが、ぽつりと言った。

「……あそこまで行けそうだ。」

「行かないわよ。」

「まだ何も言ってないぞ。」

「顔に出ているもの。」

「バレたか。」

アリーが小さく笑う。

「今日は蔵王の自然をゆっくり楽しみましょう。」

「わかった。」

アリスは素直に速度を戻した。

冬の蔵王

季節が冬になると、蔵王の景色は大きく変わる。

山々は白く覆われ、木々も夏とはまったく違う姿を見せる。

その中で、アリスが何かを見つけた。

「……おい。あれ、木なのか?」

「そうよ。樹氷ね。」

雪と氷に覆われた木々が、大きな白い姿になって並んでいる。

アリスは目を細めた。

「すげえ……。」

しばらく声が出なかった。

「木が雪を着てるみたいだな。」

「自然が作った景色ね。」

「一個ずつ形が違う。なんか、生き物みたいにも見える。」

「蔵王の冬を代表する景色のひとつよ。」

アリスはゆっくりと樹氷を眺めた。

「夜に見たら、ちょっと怖そうだな。」

「ライトアップされると、また違った雰囲気になるわ。」

「夜の蔵王も見てみたいな。」

「欲張りね。」

「旅だからな。」

アリスは笑った。

最上川を見つけて

蔵王の山々を離れると、スカイロードは少しずつ高度を下げていった。

やがて遠くに、一本の川が見えてきた。

「見えてきたわ。」

「何が?」

「最上川。」

アリスは川を見下ろした。

「……あれが?」

最上川は、山々の間を縫うように流れている。

大きく曲がりながら、町や田畑の間を抜け、遠くへ続いていた。

「思ってたより、ずっと大きいな。」

「山形の景色をつなぐ川でもあるの。」

アリスはしばらく川を眺めた。

「山から川が出てきて、町を通って、そのまま海まで行くんだな。」

「そうよ。」

「宮城では島が景色を作ってた。」

「そして山形では?」

「川が景色をつないでる。」

アリーは少し笑った。

「いい見方ね。」

川と並んで走る

スカイロードは、しばらく最上川に沿って進んでいく。

川はまっすぐではない。

山に沿って曲がり、谷間へ入り、また向きを変える。

アリスは、その流れを追うようにペダルを回した。

「川って、見てると面白いな。」

「どうして?」

「どこへ行くのか、ずっと見ていたくなるんだよ。」

アリーは前方を見る。

「だから川沿いの旅は、次の景色を想像しながら進めるのね。」

「そういうこと。」

山。

森。

川。

それぞれの景色が重なり、ひとつの山形の風景になっていた。

最上川の夕暮れ

夕方。

太陽が山の向こうへ近づくにつれて、最上川の水面にオレンジ色の光が伸びていった。

山々の影が長くなり、川だけが静かに光を受けている。

アリスはペダルを止めた。

「……きれいだな。」

「昼とは、ずいぶん違って見えるでしょう?」

「ああ。昼間は山の中を走ってる感じだった。」

アリスは川を見つめる。

「今は、川が光ってる。」

青いレールも夕日の色を受け、少しだけ金色に変わっていた。

「なあ、アリー。この川って、ずっと海まで行くんだよな?」

「そうよ。」

「じゃあ、宮城で見た海にもつながってるのか。」

「そういうことになるわね。」

アリスは少し驚いた。

「さっきまで宮城の海を見てたのに、今は山形の川を見てる。」

アリーは静かに答えた。

「景色は変わっても、水はつながっている。」

「……いいな、それ。」

アリスはもう一度、最上川を見た。

山形リンクの終端

夕暮れが深くなり、遠くの山々が青紫色の影へ変わっていく。

その向こうに、次の青いレールが見えてきた。

「次は?」

「福島リンク。」

「福島か。何があるんだ?」

「磐梯山。それから、猪苗代湖。」

「湖?」

アリスの目が輝いた。

「また水があるじゃないか。」

「今度は海でも川でもなく、湖よ。」

「それは楽しみだな。」

二人のタイムサイクルが、再び青いレールの上を走り始める。

アリスは振り返った。

遠くに見える山々。

夕暮れの中を流れる最上川。

その向こうへ続く空。

「……また来たいな。」

「気に入ったの?」

「うん。山も川も、思ってたより面白かった。」

「宮城では島を探していたのに、山形では川を追いかけていたわね。」

「旅なんだから、いろいろ見つけたほうがいいだろ?」

「そうね。」

山形の山々が、少しずつ遠ざかっていく。

その下を流れる最上川も、夕暮れの中へ溶けていった。

海から山へ。

島から川へ。

景色は変わっていく。

けれど、そのすべては一本の空の道でつながっている。

アリスは前を向いた。

「次は湖か。」

「そうよ。」

「じゃあ、今度は湖探しだな。」

アリーは小さく笑った。

「また探すのね。」

「もちろん。」

アリスはペダルを踏み込んだ。

その先には、まだ見ぬ福島の景色が待っている。

二人は、新しい空の道へ走り出した。

🌤 スカイロード公式設定

『スカイロード』は、西暦2125年を舞台にした未来SFサイクリングストーリーです。作品に登場する未来技術や世界観、登場人物などを「公式設定ページ」にまとめています。物語をもっと楽しみたい方は、ぜひご覧ください。

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