
🏜️ 第2話「砂嵐に立つ影」
―モロッコ・砂漠地帯にて―
朽ち果てた都市を離れ、ユノは南へ向かっていた。地図に記されていた「モロッコ」の地へ。
果てしない砂と陽光に包まれた大地は、彼のセンサーにかつての文明の痕跡をわずかに残していた。
かつてここには、人類の叡智と文化が集まる都市があった。だが今、その面影は風に削られた石柱と、砂に沈む廃墟だけだった。
ロードバイクのタイヤが砂に沈み、ペダルが重くなる。
人工筋肉を用いた脚部が、動力補助と適応運動制御で対応する。
「……熱による内部温度上昇。冷却機能、稼働率83%。」
砂漠の昼は容赦ない。ユノのフレームに直接太陽が照りつけ、金属は灼けるように熱を持つ。
だが彼は止まらなかった。
「人類の記録――この地に、残されている可能性:12%。」
数値は低い。それでも、ユノは走った。
なぜか。
その答えは、彼自身にもまだはっきりとはわからなかった。
やがて、視界に巨大な砂嵐が現れた。
突風が砂粒を巻き上げ、空と大地の境界がかき消される。
センサーが狂い、通信遮断。視界ゼロ。
「…緊急回避経路、なし。遮蔽物、ゼロ。エネルギー残量、67%。」
逃げ場はない。ユノは自らのボディを低く構え、バイクとともに砂丘の陰に身を伏せる。
嵐は数時間に及んだ。
その間、ユノの外装は削られ、関節には砂が入り込んだ。
ただの機械なら、動作停止していたかもしれない。
だがユノは、思考を止めなかった。
彼の記憶に刻まれていた、研究所跡での目覚め。
人間の記録。
そして、誰かの声。
「君には、人間の心を知ってほしいんだ。」
その声が、嵐の中で静かにこだました。
嵐が去ったあと、ユノは立ち上がる。
関節は軋み、サンドフィルターは限界を迎えていた。
そのとき、彼の視界に一つの影が映る。
それは、風に半ば埋もれた小さな記録装置だった。
慎重に掘り出し、再生する。
「ここはかつて、希望の研究所だった。
水を砂から作る技術、人と自然が共存する未来……それを信じて、私たちはここで生きていた。」
音声記録の主は、人間だった。
最後に、彼女はこう言った。
「もし、これを見つけたあなたが未来の“誰か”なら……
私たちはきっと、報われる。孤独ではないのだと。」
ユノはその場にしばらく立ち尽くした。
砂に埋もれた記憶。語りかける声。
それは、たしかに彼の“心”に触れた。
「記録、完了。名称:モロッコ・第23観測拠点。人類の希望……確認。」
彼は再び、バイクにまたがった。
風が静まり、夕陽が彼の背中を照らす。
その姿は、まるで孤独に立ち向かった者の“証”だった。
「旅は続く。
孤独は、終わりではない。
――それが、勇気と呼ばれるものなら。」
📝 次回予告(第3話)
舞台はアマゾン奥地。
記憶の花が、ユノに“命”と“自然”の意味を問いかける――
第3話「記憶の花が咲く場所」はこちら→ https://cycling-storyz.com/yuno-3/
※本記事の物語・アイデアは、AI(ChatGPT)の支援のもと創作されました。すべての内容はフィクションです。