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スカイロード 第7話:山と色彩の湖 ― 福島リンク

サイクリングストーリー

プロローグ

山形リンクを抜けた青いレールは、最上川を離れ、さらに南へ向かっていた。

夕暮れの山々が遠ざかっていく。

その先には、また大きな山が見えていた。

アリスは前方を見つめた。

「……あれが磐梯山か?」

「そうよ。ここからが福島リンク」

アリーが答える。

「山形も山だったけど、福島も山なんだな」

「でも、今度は山だけじゃないわ。磐梯山のまわりには、湖や沼があるの」

「湖?」

「猪苗代湖。それから五色沼」

アリスの目が輝いた。

「山の次は湖か。なんか、面白そうだな」

青いレールは、磐梯山へ向かって伸びていた。


磐梯山を見上げて

近づくにつれて、磐梯山の姿が大きくなっていく。

緑に覆われた山肌。

深い谷と森。

その向こうには、どこまでも空が広がっていた。

アリスは自然と速度を落とした。

「……でかいな」

「そうね」

「山形で見た山とは、また感じが違う」

アリスは山頂を見上げた。

「上から見る山って、変な感じだな。遠くから見ると一つの山なのに、近づくといろんな斜面がある」

「遠くから見る景色と、近くで見る景色は違うものね」

しばらく山を眺めていたアリスが、ぽつりと言った。

「……あそこ、走れないのか?」

「山を登るつもり?」

「ちょっとだけ」

「その『ちょっとだけ』が信用できないのよ」

「なんでだよ」

アリーが笑う。

「前にも同じことを言っていたでしょう?」

「……そうだったな」

アリスはレールへ視線を戻した。

「今日は見るほうにするか」


湖を見つけて

磐梯山を横に見ながら進んでいると、やがて視界が大きく開けた。

山々の間に、広い水面が見えてくる。

太陽の光を受け、湖が青く輝いていた。

「……あれが湖か?」

「そうよ。猪苗代湖」

「でかいな。海みたいじゃないか」

眼下の湖は山々を映しながら、静かに広がっている。

アリスはしばらく眺めていた。

「山形では山から川が流れてた」

「そうね」

「福島では、山のそばに湖があるんだな」

「景色のつながり方も、場所によって違うわね」

アリスは満足そうに頷いた。

「なるほどな」


五色沼へ

スカイロードは猪苗代湖を離れ、磐梯山の北側へ進んでいく。

森が増え、景色が少しずつ変わっていった。

やがて木々の間から、水面が見えてくる。

「……あれ?」

「五色沼よ」

アリスは下を覗き込んだ。

「……青い」

深い青色の水面。

ところが少し先へ進むと、今度は緑がかった水が現れた。

「さっきと色が違わないか?」

「違うわね」

さらに進むと、青とも緑ともいえない不思議な色の沼が見えてきた。

「同じ場所なのに?」

「沼ごとに水の色が違って見えるの。火山活動による地形や、水に含まれる成分、光の当たり方などが関係しているのよ」

アリスは水面を見つめた。

「自然って、色まで変えるのか」

「そういうことね」

「すごいな」

アリスはしばらく言葉を失った。


色の違う湖を追いかけて

スカイロードは五色沼の上空をゆっくり進んでいく。

青。

緑。

深い青。

沼ごとに違った表情が広がっていた。

「次は何色だ?」

「それは自分で見つけてみたら?」

「よし」

アリスは前方を覗き込む。

「あっちにあるぞ」

「見つけたわね」

「今度は青……いや、緑っぽい」

「光の角度でも見え方が変わるのよ」

「じゃあ、時間が変わったらまた違って見えるのか?」

「そうね」

アリスは少し考えた。

「じゃあ、同じ場所を何回見ても飽きないな」

「そうかもしれないわ」

「朝と昼と夕方で見てみたい」

「また欲張りになってきたわね」

「旅だからな」

アリーが笑った。

「その言葉、便利ね」

「便利だろ?」


磐梯山と五色沼

五色沼を進むと、再び磐梯山が視界に入ってきた。

そのふもとには、いくつもの沼が広がっている。

アリスは山と水面を交互に見た。

「五色沼って、磐梯山と関係あるんだよな?」

「ええ。磐梯山の火山活動によって、この地域の地形は大きく変化したの」

「山があって、沼ができた」

「そうね」

アリスは眼下の景色を見渡した。

「山があって、湖があって、沼がある。全部合わせて福島の景色なんだな」

アリーは静かに頷いた。

「そういう見方もできるわね」


夕暮れの五色沼

夕方。

太陽が西へ傾くと、森の影が長く伸びていった。

五色沼の水面にも夕日の光が差し込んでいる。

アリスはペダルを止めた。

「……また変わった」

「ええ」

「さっきより暗いのに、なんかきれいだな」

水面には空の色が映り、木々の間から差し込む光が静かに揺れている。

アリスはしばらく黙っていた。

「山形では、夕方に最上川が光ってた」

「そうだったわね」

「福島では、沼が光ってる」

アリーは水面を見る。

「同じ夕暮れでも、場所によって見えるものが違うわね」

「でも、どっちも水なんだよな」

「そうね」

アリスは笑った。

「山形では川を追いかけて、福島では色を追いかけた」

「いい旅になっているでしょう?」

「うん」


福島リンクの終端

夕暮れが深くなり、磐梯山の輪郭が青紫色へ変わっていく。

五色沼も、森の中へ静かに溶け込んでいった。

その先に、次の青いレールが見えてくる。

「次は?」

「茨城リンク」

「今度は何がある?」

「海。それから湖。そして筑波山」

アリスの目が輝いた。

「また山と水じゃないか」

「でも、今までとは違う景色よ」

アリスは振り返った。

遠くに見える磐梯山。

そのふもとに広がる森。

そして、夕暮れの五色沼。

「……福島、面白かったな」

「どこが一番よかった?」

アリスは少し考えた。

「五色沼」

「やっぱり?」

「ああ。だって、同じ水なのに色が違うんだぜ?」

「そこが気に入ったのね」

「うん」

二人のタイムサイクルが、再び青いレールの上を走り始める。

アリスは最後に、もう一度だけ振り返った。

磐梯山が夕暮れの空に浮かんでいる。

そのふもとには、五色沼が静かに広がっていた。

山。

湖。

沼。

そして、変化する水の色。

アリスは前を向いた。

「次は海か」

「そうよ」

「じゃあ、今度は海探しだな」

アリーは小さく笑った。

「また探すのね」

「もちろん」

アリスはペダルを踏み込んだ。

青いレールが、夕暮れの空へ伸びていく。

その先には、まだ見ぬ茨城の景色が待っている。

二人は、新しい空の道へ走り出した。

🌤 スカイロード公式設定

『スカイロード』は、西暦2125年を舞台にした未来SFサイクリングストーリーです。作品に登場する未来技術や世界観、登場人物などを「公式設定ページ」にまとめています。物語をもっと楽しみたい方は、ぜひご覧ください。

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