青く光る未来のレーン
風を切って走る喜び

「やっぱり、この道、気持ちいいよね!」
アキが笑いながら風を切った。
太陽の光を受けて、彼女の赤いタイムサイクルがきらめく。
前方には、次世代重力バリア完備の自転車専用レーン。
幅4メートルの路面が、淡い青の光を帯びてどこまでも続いている。
舗装材には“エアセルポリマー”と呼ばれる弾性素材が使われ、わずかな衝撃も吸収。
滑るような走行感と、浮遊するような軽さ。
まるで重力から解き放たれたかのような感覚に、アキの頬が自然と緩む。
「これ、世界一安全な道だよな」
ヒロが笑いながら隣を走る。彼の青いタイムサイクルも静かに光を放っていた。
「そう。未来のために作られた、“守る道”だよ」
アキが答える声は、どこか誇らしげだった。
信号も、交差点も、もう存在しない。
すべての交差道路は地下へ潜り、上空では小型ドローンが走行を監視している。
スピードに制限はない。安全装置とAIによる補正が、すべてのリスクを計算してくれる。
ただ、風を感じ、ペダルを踏むだけ。
どこまでも、ただまっすぐに――それだけで、未来が少しだけ近く感じられた。
守るためのバリア

ヒロは右側の縁に流れる淡い青い光線に目を留めた。
「……これが、バリアか」
その声には、わずかな畏れが混じっていた。
自転車の高さと速度をリアルタイムで検知し、車やバイクを自動で弾く“重力バリア”。
微細な量子振動が壁のように展開し、衝突エネルギーをゼロへ変換する。
「昔はね、車がレーンに入ってきて事故が多かったんだって」
アキが言った。
「でもこのバリアができてから、自転車事故は90%減ったんだってさ」
「へぇ……」
ヒロはうなずきながらも眉をひそめる。
「でもさ……完璧ってことはないよな。駐車場の出入口とか、センサーの盲点もある。
もし子どもが飛び出してきたら、AIはどこまで対応できるんだろ」
アキはペダルを緩めて横に並んだ。
「うん。だからこそ、走る人間も気を抜いちゃいけないんだよ」
彼女の言葉は、風に乗って静かに響いた。
不意の危険

その言葉が終わるか終わらないかのうちに――
前方の出入口から、1台の車が突然飛び出してきた。
「ヒロ、ストップ!」
アキの声が風を裂く。
ヒロは反射的にブレーキを握った。だが、反応が一瞬遅れた。
タイヤが悲鳴を上げ、後輪が浮き上がる。
ガッ——!
青い光のレーンに、ヒロの身体が投げ出された。
ヘルメットが路面を打ち、火花が散る。
バリアが一瞬光を強め、車を弾き飛ばした。運転手が慌てて停車し、顔を真っ青にして降りてきた。
静寂。
その中で、アキの鼓動だけが耳の奥で鳴り響いていた。
命を預ける道

アキはタイムサイクルを止め、全力で駆け寄った。
「ヒロ! 大丈夫!?」
ヒロは腕で顔をかばいながら、ゆっくりと体を起こす。
肘と膝に擦り傷。ヘルメットには細い傷跡が一本走っていた。
「……だいじょぶ。ちょっと、すりむいただけ」
かすれた声に、アキは思わず涙ぐんだ。
「もうっ! だから言ったじゃん、“気を抜くな”って!」
怒鳴ったあとで、自分の声の震えに気づく。
ヒロは目を伏せ、唇をかむ。
「……ごめん」
アキは膝をついて、ヒロの腕をそっと拭った。
その掌の震えが、どれだけ怖かったかを物語っていた。
「ほんと……バリアがあって助かった。
もしなかったら、どうなってたか……」
ヒロは小さくうなずき、視線を右へ向けた。
淡い青の光が、彼の影をやさしく照らしていた。
「……これが、“命を守る道”か」
呟いた声は小さかったが、確かに風の中で響いた。
未来をつなぐ手
立ち上がったヒロは、バリアの光を見上げた。
空へ向かって伸びていくその輝きは、まるで誰かが差し出してくれた“守る手”のようだった。
「ありがとう、バリア」
「おい、それ人じゃないから」
アキが少し呆れた声で笑う。
ヒロは頬をかきながら言った。
「でもさ。未来の誰かが、俺たちのために作ってくれたんだ。
この道も、このバリアも。
だったら、俺たちもこの道をちゃんと走って、次の世代に渡さなきゃ」
アキは少しの間、黙ってヒロを見つめた。
いつの間にか、少年の顔にはほんの少し大人びた表情が浮かんでいた。
「……あんた、ちょっと成長したんじゃない?」
「うるさい」
ふたりは顔を見合わせ、同時に笑った。
その笑いが、風に溶けて青空へと吸い込まれていく。
そして、未来へ

再びサドルにまたがる。
ペダルを踏み込むと、タイヤの発光が徐々に強くなる。
青と赤の光が絡み合い、レーンの上を駆けていく。
ヒロの膝には小さな擦り傷。
けれど、その目は真っ直ぐに前を向いていた。
アキの笑顔も、どこか誇らしげだった。
彼女の中にも、弟を守れた安堵と、共に走れる喜びがあった。
風が吹く。
青く光るレーンが、ふたりの足元からどこまでも続いていく。
その道は、ただの舗装ではない。
未来を信じた人々の思い、守りたいという願い、
そして、今日を生きるふたりの決意が重なり合ってできた“光の道”だ。
——未来を走る者たちは、過去の誰かの祈りの上を走っている。
ふたりのタイムサイクルが風を切る音だけが、
広い空に静かに響いていた。
青く光る未来の道は、今日も変わらず――
希望を乗せて、静かに、そして力強く、続いていく。
(おしまい)

※この物語はフィクションです。AI(ChatGPT)の支援をもとに執筆・編集されています。

