夕方のサンセット。
アキは店の隅に置かれた古い木箱を見つけた。
「ユウさん、これ何?」
箱の中には色あせた紙芝居が入っている。
ヒロが一枚取り出した。
「へえ……昭和の紙芝居か。」
すると紙芝居の裏に古いメモが挟まっていた。
『明日の公演までに見つけてくれ』
「何これ?」
アキの目が輝く。
「面白そう!」
ヒロは嫌な予感しかしなかった。
「またそういう顔してる。」
ユウはコーヒーカップを磨きながら言った。
「その紙芝居には少し不思議な話があってね。」
「行くしかないじゃん!」
「まだ何も聞いてない!」
数分後。
二人はタイムサイクルにまたがっていた。
光のトンネルを抜ける。
風景が一変した。
商店街だった。
木造の店。
走り回る子どもたち。
自転車のベル。
夕飯の匂い。
「うわぁ!」
アキが歓声を上げる。
「昭和だ!」
「かなり活気あるな。」
商店街の広場では紙芝居屋が準備をしていた。
しかし様子がおかしい。
何度も荷物を確認している。
「どうしたんだろう。」
アキはすぐ近寄った。
紙芝居屋のおじさんは困った顔をしていた。
「大事な最後の一枚がなくなっちまってな。」
「最後の一枚?」
「これがないと話が終われないんだ。」
周りの子どもたちも不安そうだった。
「犯人とかいるの?」
アキが聞く。
「いや、朝まではあったんだ。」
ヒロが周囲を見回した。
「誰かが持っていったのかな。」
二人は聞き込みを始めた。
八百屋。
魚屋。
駄菓子屋。
すると一人の少年の話が出てきた。
「タケルなら紙芝居を持って歩いてたぞ。」

二人は商店街を飛び出した。
「いた!」
川沿いの土手。
少年が一人座っていた。
紙芝居を抱えている。
「返してあげなよ。」
アキが声をかける。
少年は首を振った。
「嫌だ。」
話を聞くと理由があった。
少年の父親は遠くへ働きに出ていた。
帰ってくる約束の日を過ぎても帰らない。
毎日寂しかった。
紙芝居の主人公が父親に似ていた。
だから最後の一枚だけ持ち帰ってしまったのだ。
「返したら終わっちゃうから。」
少年は小さく言った。
アキは黙った。
ヒロも言葉を探す。
するとヒロが気づいた。
遠くから自転車のベルが聞こえる。
郵便配達員だった。
「もしかして!」
ヒロは配達員を追いかけた。
アキも続く。
二台の自転車が昭和の町を駆け抜ける。
「すみません!」
ヒロが呼び止める。
配達員は手紙を確認した。
「この家なら今日届く予定だよ。」
差出人を見る。
働きに出ている父親だった。
二人は全力で土手へ戻った。
「タケル!」
ヒロが封筒を差し出す。
少年は震える手で開いた。
『仕事が終わった。来週帰る。』
短い手紙だった。
でも十分だった。
少年の顔に笑顔が戻る。
「……帰ってくる。」
その夜。
紙芝居は無事に始まった。
商店街の子どもたちは大盛り上がり。
最後の一枚がめくられる。
大きな拍手が起こった。
タケルも一番前で笑っていた。
帰り際。
紙芝居屋のおじさんが頭を下げた。
「ありがとうな。」
「主役はタケルだよ。」
ヒロが言う。
アキも笑った。
「うん!」
光のトンネルを抜ける。
サンセットへ帰還。
ユウが迎えてくれた。
「どうだった?」
「最高!」
アキは即答した。
「昭和って面白い!」
「事件もあったけどな。」
ヒロがため息をつく。
するとアキが紙芝居を取り出した。
「そうだ!私も紙芝居屋やる!」
「やめろ。」
「第一話!」
「やめろ。」
「主人公アキ!」
「やめろ!」
ユウは静かに笑った。
「次の時代でも同じことを言っていそうだね。」
サンセットには三人の笑い声が響いていた。
次回予告
アキが見つけたのは、一枚の古い海図。
そこに描かれていたのは――存在しない島?
次回、
「江戸の海へ!幻の宝島を追え!」
タイムサイクル、出発!

