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タイムサイクル 第10話(最終話)

タイムサイクル

ふたりで未来へ

夕暮れの帰還

長く続いた時空の旅も、ついに終わりが近づいていた。
アキとヒロを乗せたタイムサイクルは、最後の着地点へと降り立つ。
そこは「現在」──けれど、旅を始める前に見ていた風景とは少し違って見えた。

沈みかけた夕日が、海の地平線の向こうに溶けていく。
橙と群青が交じり合う空は、まるで彼らの心を映すかのように、温かさと切なさを同時に湛えていた。
潮風が頬をかすめ、髪を揺らす。ふたりは並んで自転車を押しながら、海沿いの道を歩いていた。

「なんだか、不思議な気分だね」
アキがぽつりとつぶやく。

「うん。いろんな時代を旅してきたけど……やっぱり“今”が一番現実なんだって、思い知らされた気がする」

ヒロの言葉は、幼い頃の彼なら決して口にできなかったものだった。
アキはその横顔を見つめ、心の中で「成長したな」と思った。
かつては手を引いてやらなければ進めなかった弟が、今では隣に立ち、同じ歩幅で未来を見ている。

時空を越えた旅の記憶

海沿いの道には、変わらない景色が広がっていた。
だが、ふたりの心は確かに変わっていた。

彼らは過去に触れ、未来を見た。
時にはパラレルワールドで“もう一人の自分”と出会い、選択と可能性の意味を知った。
また、時空の歪みに飲まれ、大切な存在を失いかけたこともあった。
それでも乗り越えた。失ったもの、出会ったもの、そのすべてが“今の自分”をかたちづくっている。

アキは思う。
自分たちが見つめてきたのは「時間」そのものではなかった。
出会った人々、別れを告げた人々──その“人の物語”こそが旅の本質だったのだ。

「時間の流れ」よりも、「人の生きた証」が大事なのだと。
それに気づいた瞬間、アキの胸に新しい確信が宿った。

ヒロの本音

歩きながら、ヒロが少し照れくさそうに声を上げた。
「なあ、アキ」

「なに?」

「俺、なんとなく思ってたんだ。姉ちゃんと一緒にいると、ちょっと子ども扱いされてる気がしてて……だから、反抗期っぽくしてたんだ」

アキはくすっと笑う。
「ふふ。知ってたよ」

その声音には、姉としての優しさと、仲間としての信頼がにじんでいた。

ヒロは目を伏せ、潮風に髪を揺らされながら続ける。
「でも、今は……もうちょっとちゃんと、隣を走りたいなって思ってる」

アキは言葉を失い、代わりに柔らかな笑みを浮かべた。
胸の奥に温かいものが広がっていく。
「うん。じゃあこれからは、“ふたりで未来へ”進んでいこうか」

その言葉に、ヒロもまっすぐうなずいた。

タイムサイクルからのメッセージ

その時、タイムサイクルのディスプレイが小さく点滅し、新たなメッセージが浮かび上がった。

《旅の終点に到達しました。次の起動には新たな座標設定が必要です》

まるで機械自身が、「もう時空をさまよう必要はない」と告げているようだった。

アキとヒロは顔を見合わせ、そして自然と笑った。
もう彼らは、時空を越える旅よりも大切なものを見つけている。

ふたりは自転車にまたがり、ギアをゆっくりと回し始めた。
それはもう、時空を超える旅ではない。
“ふたりの人生”という名の、もっと長くて、もっと現実的な旅のはじまりだった。

ユウの待つ場所へ

店に戻ると、懐かしいベルの音が耳に届いた。
そこには、ずっと二人を見守っていたユウが笑顔で立っていた。

「おかえり。旅はどうだった?」

アキとヒロは顔を見合わせ、同時に答える。
「すごかったよ、全部」
「でも……ここがいちばん落ち着くね」

ユウはふたりのタイムサイクルを点検しながら、穏やかに微笑む。
「君たちがどう成長して戻ってくるか、楽しみにしてたんだ」

まるで、すべてを知っていたかのような声音だった。

アキはそっと自転車のフレームに手を当てる。
「ありがとう、タイムサイクル。これからは普通の道を、一緒に走ろうね」

ヒロも隣でうなずき、力強く言葉を重ねる。
「うん。どんな坂道でも、どんな向かい風でも……ふたりなら大丈夫だよな」

その瞬間、タイムサイクルの光がほんの少しだけ輝いたように見えた。

星空の下、未来へ

外に出ると、空はすっかり夜に染まり始めていた。
群青のキャンバスに、一つ、また一つと星が瞬いていく。

アキとヒロは並んで自転車に乗り、夜の海沿いの道を走り出した。
ペダルを踏む音が、心臓の鼓動のように夜の道に響いていく。

「アキ」
「ん?」
「ありがとう。俺、やっぱりこの旅に出てよかった」

「私もだよ。だから──これからも、ふたりで未来へ」

二人の笑顔は夜空に溶け、まるで流れ星のように道を照らす。

旅の終わりではなく、人生の始まり。
時空を越えた経験が、これからの“日常”に新しい色を与えていく。

星々は道標のように瞬き、ふたりの未来を照らしていた。

終わり、そして始まり

こうして、アキとヒロの「タイムサイクルの旅」は幕を閉じた。
だがそれは、決して終わりではない。

むしろここからが、本当の物語だ。
日常の中に潜む小さな冒険。
坂道を登る苦しさも、下る爽快感も、すべてが「生きる旅」の一部になる。

姉と弟。仲間であり、家族であり、ときに支え合う存在。
彼らの未来には、まだ数えきれない日々が待っている。

──物語は終わる。
けれど、ふたりの旅はこれからだ。


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※この物語はフィクションです。AI(ChatGPT)の支援をもとに執筆・編集されています。

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