
「ふたりで未来へ」
長く続いた時空の旅も、ついに終わりが近づいていた。
アキとヒロは、最後の着地点に設定された「現在」へと帰還する。
だが、それはもう“旅を始める前”の場所とは少し違って見えた。
沈みかけた夕日が、地平線の向こうに溶けていく。
潮風に吹かれながら、ふたりは並んで自転車を押して歩いていた。
「なんだか、不思議な気分だね」
アキがぽつりとつぶやいた。
「うん。いろんな時代を旅してきたけど……やっぱり“今”が一番現実なんだって、思い知らされた気がする」
ヒロの言葉は、どこか大人びていた。
アキはその横顔を見つめ、心の中で「成長したな」と思った。かつては手を引かなければ前に進めなかった弟が、今では隣に並んで、同じ歩幅で未来を見ている。
海沿いの道には、変わらない景色が広がっていた。
だが、ふたりの心は確かに変わっていた。
過去に触れ、未来を見て、パラレルワールドで“もう一人の自分”と出会った。
失われた存在の大切さも知った。
そのすべてが“今の自分”をかたちづくっている。
ふたりが見つめてきたのは「時間」ではなく、「人」だったのかもしれない。
出会った人々、別れを告げた人々──そのすべてが彼らの旅路に彩りを与えた。
「なあ、アキ」
「なに?」
「俺、なんとなく思ってたんだ。姉ちゃんと一緒にいると、ちょっと子ども扱いされてる気がしてて……だから、反抗期っぽくしてたけどさ」
「ふふ。知ってたよ」
アキは笑って答える。その声音には、姉としての優しさと、仲間としての信頼がにじんでいた。
ヒロは照れくさそうに笑いながら続ける。
「でも、今は……もうちょっとちゃんと、隣を走りたいなって思ってる」
その言葉に、アキの目が柔らかく細まった。
胸の奥に温かいものが広がっていく。
「うん。じゃあこれからは、“ふたりで未来へ”進んでいこうか」
その時、タイムサイクルのディスプレイに新たなメッセージが浮かび上がった。
《旅の終点に到達しました。次の起動には新たな座標設定が必要です》
まるで機械自身が「もう、時空をさまよう必要はない」と告げているようだった。
ふたりは自転車にまたがる。
ギアをゆっくりとまわし始める。
それはもう、時空を超える旅ではない。
“ふたりの人生”という名の、もっと長くて、もっと現実的な旅のはじまりだった。
店に戻ると、ユウが笑顔で迎えてくれた。
「おかえり、旅はどうだった?」
アキとヒロは顔を見合わせ、同時に答えた。
「すごかったよ、全部」
「でも……ここがいちばん落ち着くね」
ユウはふたりのタイムサイクルを点検しながら、こうつぶやいた。
「君たちがどう成長して戻ってくるか、楽しみにしてたんだ」
まるで全てを知っていたかのような声音だった。
アキはそっと、自転車のフレームに手を当てた。
「ありがとう、タイムサイクル。これからは普通の道を、一緒に走ろうね」
ヒロもその隣でうなずいた。
「うん。どんな坂道でも、どんな向かい風でも……ふたりなら大丈夫だよな」
二人の目には、これからの未来がしっかりと映っていた。
空はすっかり夜に染まり始めていた。
群青のキャンバスに、一つ、また一つと星が瞬く。
それはまるで「君たちの未来を照らす道標」のように。
アキとヒロのロードバイクは、未来へと続く坂道に向かって静かに動き出した。
ペダルを踏む音が、鼓動のように夜の道に響いていく。
旅の終わりではなく、人生の始まり。
時空を越えた経験が、これからの“日常”に新しい色を与えていく。
星空の下、ふたりは笑顔で走り出した。
その姿は、まるで夜空の流れ星のように、確かに未来へと伸びていく。
そして、物語は終わる。
けれど、ふたりの旅はまだ──これからだ。
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※この物語はフィクションです。AI(ChatGPT)の支援をもとに執筆・編集されています。
