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タイムサイクル 第10話(最終話)

タイムサイクル

「ふたりで未来へ」

長く続いた時空の旅も、ついに終わりが近づいていた。

アキとヒロは、最後の着地点に設定された「現在」へと帰還する。
だが、それはもう“旅を始める前”の場所とは少し違って見えた。

沈みかけた夕日が、地平線の向こうに溶けていく。
潮風に吹かれながら、ふたりは並んで自転車を押して歩いていた。


「なんだか、不思議な気分だね」
アキがぽつりとつぶやいた。

「うん。いろんな時代を旅してきたけど……やっぱり“今”が一番現実なんだって、思い知らされた気がする」
ヒロの言葉は、どこか大人びていた。

アキはその横顔を見つめ、心の中で「成長したな」と思った。かつては手を引かなければ前に進めなかった弟が、今では隣に並んで、同じ歩幅で未来を見ている。


海沿いの道には、変わらない景色が広がっていた。
だが、ふたりの心は確かに変わっていた。

過去に触れ、未来を見て、パラレルワールドで“もう一人の自分”と出会った。
失われた存在の大切さも知った。
そのすべてが“今の自分”をかたちづくっている。

ふたりが見つめてきたのは「時間」ではなく、「人」だったのかもしれない。
出会った人々、別れを告げた人々──そのすべてが彼らの旅路に彩りを与えた。


「なあ、アキ」

「なに?」

「俺、なんとなく思ってたんだ。姉ちゃんと一緒にいると、ちょっと子ども扱いされてる気がしてて……だから、反抗期っぽくしてたけどさ」

「ふふ。知ってたよ」

アキは笑って答える。その声音には、姉としての優しさと、仲間としての信頼がにじんでいた。

ヒロは照れくさそうに笑いながら続ける。

「でも、今は……もうちょっとちゃんと、隣を走りたいなって思ってる」

その言葉に、アキの目が柔らかく細まった。
胸の奥に温かいものが広がっていく。

「うん。じゃあこれからは、“ふたりで未来へ”進んでいこうか」


その時、タイムサイクルのディスプレイに新たなメッセージが浮かび上がった。

《旅の終点に到達しました。次の起動には新たな座標設定が必要です》

まるで機械自身が「もう、時空をさまよう必要はない」と告げているようだった。

ふたりは自転車にまたがる。
ギアをゆっくりとまわし始める。

それはもう、時空を超える旅ではない。
“ふたりの人生”という名の、もっと長くて、もっと現実的な旅のはじまりだった。


店に戻ると、ユウが笑顔で迎えてくれた。

「おかえり、旅はどうだった?」

アキとヒロは顔を見合わせ、同時に答えた。

「すごかったよ、全部」
「でも……ここがいちばん落ち着くね」

ユウはふたりのタイムサイクルを点検しながら、こうつぶやいた。

「君たちがどう成長して戻ってくるか、楽しみにしてたんだ」

まるで全てを知っていたかのような声音だった。


アキはそっと、自転車のフレームに手を当てた。

「ありがとう、タイムサイクル。これからは普通の道を、一緒に走ろうね」

ヒロもその隣でうなずいた。

「うん。どんな坂道でも、どんな向かい風でも……ふたりなら大丈夫だよな」

二人の目には、これからの未来がしっかりと映っていた。


空はすっかり夜に染まり始めていた。
群青のキャンバスに、一つ、また一つと星が瞬く。

それはまるで「君たちの未来を照らす道標」のように。

アキとヒロのロードバイクは、未来へと続く坂道に向かって静かに動き出した。
ペダルを踏む音が、鼓動のように夜の道に響いていく。

旅の終わりではなく、人生の始まり。
時空を越えた経験が、これからの“日常”に新しい色を与えていく。


星空の下、ふたりは笑顔で走り出した。
その姿は、まるで夜空の流れ星のように、確かに未来へと伸びていく。

そして、物語は終わる。
けれど、ふたりの旅はまだ──これからだ。

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※この物語はフィクションです。AI(ChatGPT)の支援をもとに執筆・編集されています。

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