休日の午後。
アキとヒロはサンセットに来ていた。
テーブルの上には古いパンフレットが広げられている。
「なにこれ?」
アキが手に取った。
「2025年の万博だ。」
ユウが答える。
「万博?」
「世界中の人や技術が集まるイベント。」
ヒロが説明した。
パンフレットには未来的な建物やロボットの写真が並んでいる。
「へえ!」
アキの目が輝いた。
「未来を紹介するイベントか!」
「そういう展示も多かったらしい。」
アキは勢いよく立ち上がった。
「未来人の私たちが見に行ったら面白そうじゃない?」
ヒロが嫌な予感を覚える。
「まさか。」
「行こう!」
「だと思った。」
ユウは苦笑した。
「今回は人が多い場所だ。」
「?」
「タイムバリアを忘れるな。」
「タイムバリア?」
「走行中、周囲の人に認識されにくくなる機能だ。」
ヒロが驚く。
「そんな機能あったの?」
「説明してなかっただけだ。」
「説明してよ!」
タイムサイクルが青白く輝く。
二人はペダルを踏み込んだ。
景色が流れる。
そして。
次の瞬間。
巨大な建物が視界に飛び込んできた。
「うわあああ!」
アキが歓声を上げる。
2025年。
大阪・関西万博。
色とりどりのパビリオン。
世界各国の旗。
大勢の来場者。
会場全体が活気に満ちていた。
「すごい……。」
ヒロも見入る。
「100年前の世界とは思えないな。」
「行こう!」
アキは駆け出した。
二人は未来技術を紹介するパビリオンへ入った。
大きなスクリーンの前に人だかりができている。
『こんにちは。何をお手伝いしましょうか?』
画面の中のAIが話していた。
アキは驚く。
「しゃべった!」
「AIだよ。」
ヒロが答える。
「この頃はAIが急速に広がり始めた時代なんだ。」
来場者が質問する。
『おすすめの観光地は?』
AIが答える。
会場から拍手が起きた。
アキは腕を組んだ。
「これでみんな驚いてたの?」
「100年前だから。」
「今のAIと比べると可愛いね。」
「比べる相手が未来すぎる。」
二人は笑った。
その時だった。
近くから泣き声が聞こえた。
「うう……。」
小さな男の子が一人で立っている。
アキがしゃがみ込む。
「どうしたの?」
「お母さんとはぐれた……。」
「迷子か。」
ヒロが周囲を見る。
人でいっぱいだ。
簡単には見つからない。
「名前は?」
「リク。」
「最後にどこにいたの?」
「大きいロボットを見るって言ってた。」
ヒロは会場マップを見る。
「ロボット展示エリアだ。」
アキは立ち上がった。
「探そう!」
二人は広い会場を歩き回った。
しかし見つからない。
「人が多すぎる。」
ヒロが額の汗をぬぐう。
その時。
アキが言った。
「タイムサイクル使えないかな?」
「会場の中だぞ?」
「タイムバリアあるんでしょ?」
確かにそうだった。
ヒロは少し考える。
「短時間なら大丈夫か。」

人目の少ない場所でタイムサイクルを呼び出す。
青白い光が走った。
「行くよ!」
アキがペダルを踏む。
タイムバリアが作動する。
近くの来場者が振り向く。
「今、何か通った?」
「風じゃない?」
誰もはっきり認識できない。
タイムサイクルは静かに会場を駆け抜けた。
ヒロは地図を確認する。
「次は東エリア!」
「了解!」
巨大パビリオンの横を通過。
広場を横切る。
そして。
遠くで誰かが叫んだ。
「リクー!」
女性が必死に探している。
「いた!」
アキが声を上げた。
リクを連れて近づく。
「お母さん!」
女性が振り向いた。
「リク!」
母親は駆け寄った。
強く抱きしめる。
「よかった……!」
涙ぐむ母親。
リクも笑顔だった。
「ありがとう!」
「どういたしまして!」
アキも満面の笑みを浮かべた。
夕方。
会場はオレンジ色の光に包まれていた。
二人は広場から景色を眺めていた。
未来を夢見る人たち。
新しい技術。
新しい挑戦。
その全てが輝いて見えた。
「面白かったね。」
アキが言う。
「うん。」
ヒロもうなずく。
「100年前の人たちも未来を楽しみにしてたんだね。」
「その未来の先に私たちがいる。」
アキは少し考えた。
そして笑った。
「なんか嬉しい。」
サンセットへ戻るとユウが待っていた。
「おかえり。」
「ただいま!」
アキが元気よく答える。
「万博はどうだった?」
ユウが聞いた。
アキは即答した。
「最高!」
「展示が?」
「それもだけど。」
アキは胸を張った。
「みんな未来にワクワクしてた!」
ユウは少しだけ微笑んだ。
「それは良かった。」
するとアキが勢いよく立ち上がる。
「よし!」
ヒロが嫌な予感を覚える。
「今度は300年後の万博へ行こう!」
「あるか分からないだろ!」
「500年後!」
「増やすな!」
「1000年後!」
「未来に行きすぎ!」
ユウは苦笑した。
店の奥では、タイムサイクルのギアが静かに回り続けていた。
次回予告
2025年への冒険から数日後。
いつものようにサンセットを訪れたアキとヒロは、タイムサイクルに見慣れないエラー表示が現れるのを目撃する。
【検索範囲外】
その意味を知った二人は大興奮。
しかしユウはなぜか歯切れが悪い。
さらにガレージの奥には、大きな布で隠された謎のマシンが――。
まだ見ぬ時代。
まだ知らない冒険。
そして静かに動き始める新たな計画。
タイムサイクル 第10話
『終わらない冒険』
次の旅は、もう始まっている。

