アキとヒロのタイムトラベルアドベンチャーへようこそ!
本シリーズ『タイムサイクル』では、ロードバイクで時空を旅する姉弟が、過去・未来・異世界を駆け巡ります。
第2話では、昭和の下町を舞台にした物語が展開します。
それでは本編をどうぞ!

「過去へのダイブ」
昭和の下町へ
眩しい光の渦が静まり、視界が戻ったとき──
アキとヒロの目の前に広がっていたのは、
まるで古い映画のスクリーンを覗き込んでいるかのような世界だった。
軒先に吊るされた風鈴が、チリンチリンと涼しげな音を奏でる。
浴衣姿の子どもたちが駄菓子屋の前に群がり、
10円のくじ引きや、色とりどりのラムネに目を輝かせていた。
屋根は黒光りする瓦屋根。
壁には紙の看板や手書きの値札が並び、
大通りを走る車の音もここまでは届かない。
「うわ……これが、昔の日本……?」
アキは目を輝かせ、ヒロは慎重にタイムサイクルを押して歩く。
ふたりは通りの端に自転車をとめ、恐る恐る下町の路地を歩き出した。
神社での出会い
路地を抜けると、木々の間から鳥居が見えた。
小さな神社の境内では、ひとりの青年が古びた自転車を整備していた。
額には汗が光り、油に汚れた指先が工具を器用に操っている。
「こんにちは〜!」
アキが元気に声をかけると、青年は顔を上げ、にっこりと微笑んだ。
「よう。観光か? 珍しい自転車だな。手伝おうか?」
その青年の名は「ヒロシ」。
優しげな眼差しと、柔らかな話し方に、
アキとヒロは思わず息をのんだ。
「……ヒロ、おじいちゃんに似てない?」
アキが小声でつぶやく。
「え? まさか……そんなわけ……」
ヒロは否定しかけたが、言葉が喉につかえた。
幼いころに祖父と見た古い写真、その若き日の姿にあまりにも似ていたからだ。
昭和の町を歩く
ヒロシの案内で、ふたりは下町を散策することになった。
木造の商店街。
店先には乾物や漬物が並び、
おかみさんが威勢のいい声で呼び込みをしている。
畳敷きの小さな本屋には、少年雑誌や貸本漫画が山積みになっていた。
駄菓子屋の棚には、ビー玉の入ったラムネ瓶、色あせたお菓子の箱。
ガラス越しにのぞく子どもたちの顔は、今の時代と変わらぬ好奇心に満ちていた。
「なんか……タイムスリップしたって実感するね」
アキが笑うと、ヒロは黙って頷いた。
胸の奥に広がるのは、不思議な懐かしさだった。
心を許せる人
境内に戻ると、ヒロはヒロシと一緒に自転車の整備を始めた。
ヒロシが工具の使い方を見せ、ヒロが見よう見まねでボルトを回す。

「しっかり押さえて、ゆっくり回すんだ」
「こ、こう……?」
額に汗を浮かべながらも、ヒロの顔は真剣そのもの。
その様子を見ていたアキが、ふとつぶやいた。
「ヒロ、なんか楽しそうだね」
「うん……なんか、落ち着くんだ。この人のそばにいると」
──本当は祖父じゃない。
頭ではわかっている。
それでも、アキもヒロも、
ヒロシの柔らかな笑顔に、家族のような安心感を覚えていた。
古い写真と真実
日が傾き、境内に赤い光が差し込むころ。
ふたりは神社の裏手で、埃をかぶった木箱を見つけた。
中から出てきたのは、古い家族写真。
そこに写っていたのは──ヒロシと、祖父によく似た若者。
「似てる……でも、違う……?」
アキが写真を覗き込み、ヒロは静かに頷いた。
名前も年号も違う。
つまり、やはり別人なのだ。
「……やっぱり、別人なんだね」
ヒロの胸に少し寂しさが広がる。
けれど、彼はふと微笑んだ。
「でも、似てるってだけで安心できた。……それだけで十分だよ」
アキもその言葉にうなずいた。
別れと旅立ち
やがて、タイムサイクルの表示が淡く光り始めた。
次の時代が、ふたりを呼んでいる。
「ありがとう、ヒロシさん」
「元気でな。……また、どこかで」
アキとヒロはペダルを踏み込む。
夕焼けに染まる昭和の街並みが光の中で揺れ、ゆっくりと遠ざかっていった。
──それは確かに祖父ではない。
けれど、家族のように心に残る、忘れがたい夏の記憶だった。
📢次回予告:『すれ違う記憶』
昭和の下町で出会った若き日の祖父ヒロシ。アキとヒロそしてヒロシ3人の思いが交錯する。
タイムサイクル第3話「すれ違う記憶」はこちら → https://cycling-storyz.com/timecycle-3/
第1話「はじまりのギア」はこちら →https://cycling-storyz.com/timecycle-1/
#タイムサイクル #次回予告 #タイムトラベル
※この物語はフィクションです。AI(ChatGPT)の支援をもとに執筆・編集されています。