アキとヒロのタイムトラベルアドベンチャーへようこそ!
本シリーズ『タイムサイクル』では、ロードバイクで時空を旅する姉弟が、過去・未来・異世界を駆け巡ります。
第3話では、引き続き昭和の下町を舞台にした物語が展開します。
それでは本編をどうぞ!

昭和の町で出会ったもうひとりの「ヒロシ」
夕暮れの作業場
アキとヒロは、タイムサイクルの「一時待機モード」を利用し、しばし昭和の町での日々を過ごしていた。長居すれば時代への干渉が増える危うさもある。それでも二人は、そのリスクを最小限に抑えながら、ヒロシの手伝いをする時間を選んでいた。
ある日の夕暮れ、神社の裏手にある小さな作業場。そこには使い込まれた工具や油の匂いが漂い、古いママチャリが何台も並んでいた。
ヒロは、ヒロシの隣に立ち、スパナを握りしめていた。
「ここはな、ナットを押さえてからゆっくり回す。強く締めすぎると、すぐにネジ山がダメになる」
「……うん、わかった」
額に汗をにじませながら、ヒロは真剣な表情で手を動かす。錆びついたボルトを緩め、チェーンを外し、分解した部品を整然と並べていく。油で黒く汚れた手を気にすることなく、ひたむきに作業に没頭していた。
アキは少し離れた場所から、その姿をじっと見つめていた。
「ヒロ、あんな顔をするんだ……」
真剣なまなざしに、アキは懐かしい記憶を重ねる。
祖父の面影
思い出したのは、幼い頃のある夏の日。川辺で祖父に釣り竿の扱い方を教わっていたときのヒロの姿だ。言葉少なにうなずき、真剣な目で竿を握るその表情は、今のヒロと寸分違わない。
「やっぱり……似てる」
胸の奥で、アキはそうつぶやいた。
名前も同じ。顔も似ている。仕草まで重なる。だが、よく考えれば辻褄が合わないことは山ほどあった。
時代が違う。背景が違う。祖父ヒロシの記憶と、この時代のヒロシの歩んできた人生は、わずかに食い違っていた。
「……きっと別人なんだよね」
アキは、声にならない声で小さくつぶやいた。
それでも、不思議と心は穏やかだった。血のつながりがなくても、心に響くものがある。それだけで十分だった。
縁側の夜
その夜、三人は縁側に並び、切ったばかりのスイカを頬張っていた。カリッと噛んだ瞬間にあふれる甘い汁が、夏の夜を一層涼しくしてくれる。
遠くからはラジオの音が流れてくる。昭和の演歌と、アナウンサーの落ち着いた声が、虫の音と一緒に夜気へと溶け込んでいった。
「ヒロ、お前……いい目をしてるな」
ヒロシがふいに口を開いた。
「え……? あ、ありがとう」
ヒロは顔を赤らめ、照れくさそうに笑った。その様子に、ヒロシもまた口元をほころばせる。
「将来、何か作る仕事につきたいんだろ? お前、手先が器用だし」
「……うん。わかる?」
「なんとなくだ。俺も機械をいじるの、好きだったからな」
そのやり取りを、アキは静かに聞いていた。祖父と孫ではない。だが、確かに何かが繋がっている。そう感じられる瞬間だった。
出発の朝
翌朝。タイムサイクルのディスプレイに新たな座標が浮かび上がった。タイムリミットが迫っていた。
「そっか……もう行くんだな」
作業場の前で、ヒロシが穏やかな笑みを浮かべ、手を差し出す。
ヒロはその手を迷わず握り返した。
「ありがとう……すごく楽しかった。いっぱい教えてもらえて」
「おう。また来いよ」
「……うん。またね」
別れの言葉は短く、それでいて深く心に刻まれた。
遠ざかる町並み
アキとヒロはタイムサイクルにまたがり、ペダルを踏み出す。風を切り、町並みが遠ざかっていく。
「ねぇアキ……やっぱり、あの人は、じいちゃんじゃないんだよね」
「うん。でも……あれでよかったんだと思う」
ヒロはしばらく黙り込み、昭和の町を振り返った。赤い郵便ポスト。商店街に並ぶ手描きの看板。子どもたちの笑い声。すべてが遠ざかっていく。
やがて、ヒロが小さな声でつぶやいた。
「会えてよかった。……おじいちゃんじゃなくても、俺、うれしかった」
その言葉に、アキは黙ってうなずいた。
風の中へ
二人を乗せたタイムサイクルは、次なる時代へと駆け出す。
風の音が強くなるにつれ、昭和の記憶は霞んでいく。だがヒロの胸の奥には、確かな温もりが残っていた。
それは「祖父との再会」ではなく、「新しいヒロシとの出会い」だった。
──時代を越えても、人の心は繋がる。
そして二人は、再び未来へ向かって走り出した。
📢次回予告:『未来の自分』
アキとヒロが次に向かったのは、未来の世界。そこには、思いもよらぬ出会いと、新たな試練が待っていた――。
タイムサイクル第4話「未来の自分」はこちら → https://cycling-storyz.com/timecycle-4/
前の記事はこちらからまとめて読めます → https://cycling-storyz.com/timecycle-link/
#タイムサイクル #次回予告 #タイムトラベル
※この物語はフィクションです。AI(ChatGPT)の支援をもとに執筆・編集されています。