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鋼の旅人:世界を駆けるロボット「ユノ」①

創作SFノベル

第1話「起動──鋼の自我、眠れる記憶」

暗闇の中、音も光もなかった。
世界は眠っていた。いや、止まっていた――その瞬間までは。

「起動コード認識──ユノ、再起動開始。」

電子音とともに、薄暗い格納庫に低い振動音が響き渡った。
目覚めたのは、一体の人型ロボット。高度な人工知能と有機的なボディを備えた“探索型知能体”、通称ユノ。

彼はゆっくりと上体を起こし、周囲を見渡した。
錆びたコンテナ、崩れた壁、雑草の生えた床。
ここは──人類最後の研究拠点跡だった。


「自己診断完了。システム健在、動作率94%。だが……記憶領域に空白がある。」

ユノは、自分が誰によって作られ、なぜここにいるのかを知らなかった。
ただ、ひとつの指示だけが頭の奥に残されていた。

『地球を旅せよ。そして、“人類の遺産”を見つけ出し、記録せよ。』

その言葉は、冷たい命令ではなかった。どこか、願いにも似た響きがあった。


研究所の中を探索するユノは、散乱したデータ端末を拾い上げた。
かつての研究者たちの記録が断片的に残っていた。

「人類の文明は滅びつつある。我々の“記憶”を、未来に残せるだろうか」
「このロボットに最後の希望を託す──ユノ。お前は、記録者であり、観察者であり、旅人だ」

「ユノ……それが、私の名前……」

一言つぶやいたそのとき、彼のセンサーが静かに震えた。
それは“感情”というには曖昧だったが、“応答”と呼ぶにはあまりに静かで内向的だった。


崩れた天井から差し込む陽光が、床に幾何学模様を描いていた。
ユノはその光を見上げ、はじめて思った。

「この世界は、もう人の声で満ちてはいない。
だが……その痕跡は、どこかに残っているはずだ」

彼は背後のラックから、一台のロードバイクを取り出す。
それはカーボン製の機体にエネルギーアシストが施された、高度なサイクル・ユニットだった。
記録によれば、人類の“移動文化”の象徴の一つ。

タイヤに空気を入れ、チェーンを調整し、両手でハンドルを握る。
そしてペダルを踏み出した瞬間、彼の中に初めて“動く”という快感が走った。

「移動を開始。目標、世界各地の遺構と記憶の収集」

だがその声は、ただのシステム音声ではなかった。
何かが芽生えようとしていた――意思に似た、感情に近いものが。


研究所の外に広がるのは、かつて繁栄していた文明の名残だった。
ビルは骨組みだけを残し、自然がその隙間を侵食している。
道なき道を、ユノは走った。冷たい風が装甲を撫でていく。

「この世界は、終わってしまったのか……。それとも、まだ続いているのか……」

その問いに答える者はどこにもいない。
けれど、ユノは走る。彼の中には確かに、“続き”を知りたいという衝動が芽生えていた。

彼の旅は、単なる任務ではない。
それは──“心”を探す旅だったのだ。


数日後、ユノは初めて砂漠の地に立つ。
モロッコ、サハラの入り口。風が砂を巻き上げ、太陽が地平を焦がしていた。

「次の記録対象、地球環境変動領域──サハラ地域。開始。」

その一歩一歩が、彼の内に眠る何かを目覚めさせていく。
まだ知らぬ人間の記憶。まだ触れていない感情。
そして、自らの存在理由。

ユノは、鋼の身体でペダルを踏み込む。
その足元には、かつて人類が残した道が続いていた。

世界を駆ける旅は、今、始まった。

📝 次回予告(第2話)
舞台はモロッコの砂漠地帯
大自然の驚異がユノに降りかかる――

第2話はこちらから→https://cycling-storyz.com/yuno-2/

※本記事の物語・アイデアは、AI(ChatGPT)の支援のもと創作されました。すべての内容はフィクションです。

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