休日の午後。
アキとヒロはいつものようにサンセットを訪れていた。
店の奥でユウが古びたポスターを広げている。
「なにそれ?」
アキが身を乗り出した。
ポスターには大きく馬の絵が描かれている。
『西部横断レース開催!』
「レース?」
「昔のアメリカだな。」
ヒロが説明する。
「西部開拓時代ってやつ?」
「たぶんね。」
アキの目が輝いた。
「決まり!」
「決まってない。」
「西部の町へ行こう!」
「絶対そう言うと思った。」
ユウは苦笑した。
「気をつけてな。」
数分後。
二人はタイムサイクルにまたがっていた。
青白い光が車輪を包む。
景色がねじれた。
到着した先には広い大地が広がっていた。
乾いた風。
木造の建物。
土の道。
遠くには馬に乗った人々。
「おおー!」
アキが叫ぶ。
「本当に西部劇の世界だ!」
「静かにしなよ。」
ヒロが周囲を見回した。
その時だった。
町の奥から慌ただしい声が聞こえた。
「大変だ!」
「レースの優勝トロフィーがない!」
人々が騒いでいる。
どうやら町最大のイベントである横断レースを明日に控えているらしい。
しかし優勝トロフィーが消えてしまった。
「面白そう。」
「面白そうじゃない。」
アキはすでに人混みへ向かっていた。
事情を聞くと、町の少年トムが困った顔をしていた。
「最後に見たのは倉庫なんだ。」
「誰かが盗んだの?」
アキが聞く。
「わからない。」
ヒロは周囲を観察した。
すると地面に車輪の跡を発見する。
「これ、自転車じゃない?」
「え?」
この時代には珍しい。
車輪の跡は町の外へ続いていた。
「追うぞ!」
「だから待って!」
二人はタイムサイクルで走り出した。
土煙が舞う。
荒野の風の中に、タイムサイクルのバリアシステムが放つ青白い光の粒子が星屑のように散った。
車輪の跡は荒野へ続く。
丘を越える。
川を渡る。
そして古い小屋へたどり着いた。
中から物音が聞こえる。
そっとのぞくと――
トロフィーが置かれていた。
「見つけた!」
アキが飛び出す。
しかし中にいたのは悪党ではなかった。
トムだった。
「え?」
「君が?」
トムはうつむいた。
「ごめん……。」
話を聞くと、レースに出場する兄が去年も負けてしまい、自信を失っていたらしい。
レース自体が中止になれば傷つかずに済む。
そう考えて隠してしまったのだ。
「でも、このままじゃ町のみんなが困るよ。」
アキが言う。
トムは黙った。
ヒロが続ける。
「本当に兄さんを応援したいなら、勝負から逃げちゃだめだと思う。」
しばらく沈黙が続いた。
やがてトムは小さくうなずいた。
「うん。」
ところが帰り道。
突然空が暗くなった。
強風だ。
砂嵐が迫っている。
「急ごう!」
アキが叫ぶ。
三人はトロフィーを抱えて走った。
だが風はどんどん強くなる。
馬では間に合わない。
「タイムサイクルの出番だ!」
アキが言った。
ヒロがうなずく。
二人でトロフィーを固定する。
そしてトムを挟むようにして全力疾走。
砂嵐が背後から迫る。
土煙が視界を埋める。

それでも二人はペダルを踏み続けた。
「もう少し!」
「見えた!」
町の門が近づく。
最後の坂を駆け上がり――
ギリギリで到着した。
直後、砂嵐が町の外を覆った。
「助かったー!」
アキはその場に寝転んだ。
町の人々は大喜びだった。
トロフィーも無事戻った。
トムも正直に謝った。
そして翌日。
兄はレースに出場した。
結果は優勝ではなかった。
それでも胸を張ってゴールした。
トムは誰より大きな声で拍手していた。
サンセット。
光に包まれながら二人は帰還した。
「おかえり。」
ユウが笑う。
「西部劇どうだった?」
アキは腕を組んだ。
「面白かった!」
そして少し残念そうに言う。
「でも決闘はなかったな。」
「あってたまるか。」
ヒロが即座にツッコむ。
「帽子飛ばして、『決着だ!』とかやりたかった。」
「何をする気だったの。」
ユウは苦笑した。
「君たちはどこの時代でも変わらないな。」
アキは笑いながら言った。
「次はもっとすごい時代に行こう!」
ヒロは嫌な予感しかしなかった。
その予感は、数日後に現実になることをまだ知らない。
次回予告
サンセットで見つけた未来都市パンフレット。
そこに書かれていた年代は――2325年。
「私たちの200年後じゃん!」
大興奮のアキ。
しかし到着した超未来都市では、街のエネルギーを支えるエネルギーカプセルが次々と消える事件が起きていた。
空中道路と無数のホログラムが広がる未来世界。
消えたエネルギーカプセルはどこへ消えたのか?
第8話
「2325年・未来都市パニック!消えたエネルギーカプセルを追え!」
お楽しみに!

