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タイムサイクル フリートラベル④

タイムサイクル

銀河を駆けろ!宇宙コロニータイムレース

プロローグ

「宇宙に行けるのか?」
ヒロの声が、ほんの少し震えていた。

「え、宇宙って……タイムサイクルで行けるの!?」
アキは目を輝かせ、赤いタイムサイクルから身を乗り出した。

「……お前な、本気で言ってんのか? 真空だぞ? 凍るぞ? いや、燃えるかも……」
ヒロは額に手を当ててため息をつく。彼のタイムサイクルは青いボディが淡く光り、慎重さを象徴しているようだった。

「大丈夫! ユウが作った“宇宙バリアシステム”があるじゃん!」
アキは無邪気に笑う。その笑顔を見ると、ヒロはもう止められないと悟った。


☀ サンセットでの秘密

数日前──。
アキは自転車屋「サンセット」に立ち寄っていた。

整備台の上では、銀色のリング状ユニットが光を放っている。
「それ、何つけてるの?」

「バリアシステム。半径5メートルの光膜を展開できる。真空でも、宇宙塵でも問題なし。」
ユウは工具を置きながら言った。

「それって……宇宙行けるやつじゃん!」
アキの瞳がキラリと輝く。

ユウは苦笑いを浮かべた。
「まあ、理論上はね。でも未知のリスクが多すぎる。誰にも勧められないよ」

「じゃあ、私が最初に行く!」
勢いに押され、ユウは頭をかいた。
「まったく……君と弟くんは、いつも地球のルールを置き去りにするね」

こうして、アキの赤いタイムサイクルと、ヒロの青いタイムサイクルにも、宇宙バリアが搭載されたのだった。


🚀 銀河の都市「G-City-09」

次元ジャンプの光が収まり、視界が開けた瞬間、ふたりは息をのんだ。
そこには──銀河の光を閉じ込めたような都市が広がっていた。

透明ドームの内側で、光の軌道が網のように走る。
浮遊ビル群が層をなし、星屑のように輝く街。

「うわぁ……! すごい! 未来だ!」
アキは赤い発光タイヤを光らせて滑走しながら叫ぶ。
「おい、姉ちゃん! 動き回るなって! 呼吸できるのもバリアのおかげなんだぞ!」
ヒロは青い光を残して追いかけた。

そこへ、AIガイドが現れる。
「ようこそ、G-City-09へ。ただいま“宇宙タイムレース”開催中です」

「出る!」
アキの即答に、ヒロは額を押さえた。
「……やっぱりそうなると思ったよ」


🌠 レース開幕──人間代表

スタートラインには、鋼鉄のボディを持つレーシングロボットたちが並ぶ。
生身の人間は、赤と青の光を放つふたりだけだった。

「ねぇヒロ! 面白くなってきたね!」
「面白くねぇよ! 命がけなんだぞ!」

号砲が鳴る。
光が爆ぜ、ゼロ重力空間へ。
アキの赤い輪が弧を描き、ヒロの青い光がそれを追い抜く。


☄ 無重力ゾーン

「うわぁ! 浮いた! すごいよ、ヒロ!」
「手ぇ離すなって! 姉ちゃん!」

タイムサイクルはふわりと宙に浮かび、無重力を滑る。
アキは回転を利用してスピン加速。赤白い光の尾が残る。
ヒロは冷や汗をかきつつも、その軌跡に釘づけだった。

「なんでそんな楽しそうなんだよ……!」
「だって、宇宙だよ? 最高じゃん!」

赤と青、対になる光が、まるで星座のように交差した。


⚡ 磁力トンネル

「うわっ! 吸い寄せられる! 遊園地みたい!」
「遊園地じゃねぇって!」

磁場が乱れ、ふたりのタイムサイクルが引き寄せられる。
アキの赤光とヒロの青光が混ざり、紫の稲妻がほとばしった。

「バリアが守ってくれてる! ユウ最高!」
「俺の心臓は守ってくれてねぇけどな!」


🌌 光加速フィールド

一瞬で世界が光に包まれた。
アキの赤白の発光が流星のように伸び、ヒロの青白の輝きがそれを包み込む。

「きれい……星の川みたい!」
「前見て! ぶつかるって!」

それでも、ヒロの心の奥には確かな高揚感があった。
(……姉ちゃん、やっぱりすげぇや)


💫 重力バーストゾーン

最終エリア。
重力波が乱れ、コースが歪む。

「バリア三メートルに拡張!」
ヒロの声と同時に、青い光球が膨張。
アキの赤い光がそれに重なり、二つの光が一瞬、純白に融合した。

「今がチャンス! 行くよ、ヒロ!」
「行けぇぇぇ!」

重力のうねりを突き抜け、ふたりはゴールを駆け抜けた。

──結果は、準優勝。

アキはガッツポーズ、ヒロは肩で息をしながら笑った。
「姉ちゃん、もう無茶すんなよ……」
「えー、まだ半分も走ってないのに!」


🏆 表彰とユウの姿

観客席の中、静かに拍手を送る人影。
──ユウだった。

彼もこっそりレースに出場していたが、ベスト8止まり。
けれど誇らしげに笑っていた。

「人間の“予測不能な判断”──それはAIには再現できない価値です」
ロボット司会者の言葉が響く。
ユウはつぶやいた。
「……あの姉弟、未来そのものだな」


🌍 地球への帰還

「やったね! 姉ちゃん、宇宙でも走れたよ!」
「当たり前でしょ。ヒロがちゃんとついてきてくれたからね」
「……うるせぇよ。でも、まあ……悪くなかった」
「え? 今なんて?」
「なんでもねぇって!」

赤と青、ふたつの光が並走する。
バリアが再び展開し、《次元帰還開始》の文字が点滅。

「準備できた?」
「当然! 姉ちゃん、抜かすなよ!」

アキの赤い車体が燃えるように光り、ヒロの青い機体がそれを追う。
銀河の海を、紅と蒼の流星が駆け抜けた。

──やがて、青い惑星が見える。

「見て、ヒロ。地球……」
「帰ってきたな。……やっぱ、地球が一番だ」
「ふふ、そう言えるってことは、ちゃんと旅した証拠だね」

光が収束し、ふたりは青空の下へと舞い戻った。
海風が頬を撫で、太陽がまるで「おかえり」と微笑んでいた。

「ねぇヒロ、次はどこ行く?」
「地球の中で頼む……!」
「えー、つまんないの!」

赤と青のタイムサイクルが並んで走り出す。
タイヤの発光が地面に光の軌跡を残し、
それはまるで──風と空の境界線。


🚴‍♀️ エピローグ

どんな次元でも、どんな時代でも。
変わらないルールがある。

「風を感じること」
「隣を走ること」

アキの赤い光と、ヒロの青い光。
その二本の線が重なる場所に、
確かに“未来”があった。


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