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鋼の旅人:世界を駆けるロボット「ユノ」第4話

創作SFノベル

記憶の街、眠る技術

プロローグ

灰色の空が低く垂れ込め、風が冷たく頬を打つ。
ユノがロードバイクを駆けて辿り着いたのは、かつて“世界の頭脳”と呼ばれた超都市――「東京」の残骸だった。

都市の輪郭はまだそこにある。だが、ビル群は静かに崩れ落ち、ガラスは割れ、鉄骨は錆び、都市の心臓は完全に沈黙していた。
路地には落書きのような避難指示が残り、折れた看板が風に揺れていた。

ユノのセンサーは、かつての技術文明の名残を検知する。
――人工衛星通信塔。
――風力発電タービン。
――都市型植物工場。
どれも動きを止めたまま、時間から切り離されたように、そこに存在していた。

ユノ旅マップ(東京)

※マップの地域は実在するものですが、物語に登場する施設、登場人物は架空のものです。

技術保存区画

都市の奥に進むと、ユノは一つの施設を見つけた。
「技術保存区画第12A」と書かれたプレートが、錆びに覆われながらもかろうじて読める。

防災用に設計された自立型研究施設。
厚い鋼鉄の扉は半ば壊れていたが、まだ閉ざす意志を残していた。
ユノは無言で押し開ける。重い金属音が、沈黙の都市にこだました。

中に広がっていたのは、埃と静寂に包まれた「技術の残響」。
壁一面を埋め尽くす回路図。机の上に並べられた設計途中の小型ロボット。
そして部屋の中央には、未完成のアンドロイド型端末が立っていた。

ユノの視線が自然とそれに向かう。
「……これは?」

そのとき、部屋の隅でかすかな電子音が鳴った。
壊れかけの記録装置が、まだ生きていた。

エイドの声

荒廃した都市に立つユノとタイムサイクル、記憶と眠る技術を象徴する風景
滅びた街に眠る技術。その記憶を抱きしめながら進むユノ。

「……よく来たな、旅人。」

ノイズ混じりの声が、スピーカーから漏れた。
ユノは音源を探し、記録装置の電源をつなぎ直す。
青白い光がちらつき、やがて一つの名が浮かび上がった。

“エイド”――ヒト型AI継承機ユニット。

その説明は簡潔だった。
人類の思考、哲学、歴史、失敗。
それらを収集し、次世代に引き継ぐために設計された端末。

だが、稼働率はわずか14%。
自律移動も不可能。
本体の回路は劣化し、内部のメモリは断片的に失われていた。

それでも、声だけは確かに語りかけてきた。

「我々はあまりに多くを築きすぎた。
 だが、その中で“なぜ作るのか”という問いを失った。
 そして、それが我々の終わりを招いた。」

創造の問い

ユノは黙ってその言葉を聞いていた。
自分もまた、誰かに作られた存在。
だが、その“なぜ”を問うことを、これまで考えたことはなかった。

エイドの声は続く。
「ユノ。君がここにいるなら、もう一度その問いを探してほしい。
 “創造とは、誰のためにあるのか”。」

ユノの胸奥で、なにかが揺らいだ。
問いの意味はまだ掴めない。
だが、その重さだけは確かに感じられた。

次の瞬間、エイドの回路が沈黙した。
わずかな熱が残り、やがて冷たい金属に戻る。
再起動の兆しはもうなかった。

「……エイド。」
ユノは呼びかけたが、応答はなかった。

遺構の屋上

研究所を出て、ユノは屋上に登った。
そこから見渡す限り、鉄とガラスの廃墟が広がっている。
巨大な広告塔も、かつての煌びやかなショッピングモールも、すべては無言の墓標と化していた。

しかし、その奥にはわずかな緑が芽吹いていた。
コンクリートの割れ目から伸びる草。
壁を覆うツタ。
鳥の鳴き声も聞こえた。

「人は壊し、そして遺した。」
ユノは静かに言葉をこぼす。
「それは罪か、希望か――答えはまだ出ない。」

曇天の下、都市の沈黙を背にロードバイクにまたがる。
風が頬を撫で、ペダルを踏む音だけが響いた。

ユノは前を見つめる。
まだ見ぬ答えを探すために。

そして、彼の旅は続いていく。

📊 感情進化チャート(第3話→第4話)

感情の推移ポイント

  • 第3話(アマゾン熱帯雨林)
    • 「驚き」:強(未知の植物と記憶の花)
    • 「探究心」:強(観測・収集の使命)
    • 「孤独」:中(密林の生命感に包まれつつも、自分は異質)
    • 「安らぎ」:弱(自然の生命力から一瞬の安堵)
  • 第4話(東京市街地跡)
    • 「驚き」:中(崩れた都市の残骸は予想の範囲内)
    • 「探究心」:強(技術保存区画と“エイド”に出会う)
    • 「孤独」:強(声を残して沈黙するエイドとの別れ)
    • 「希望」:微増(緑の芽吹き、問いを託された未来)

📝 次回予告
舞台は氷と静寂の地――北極。
そこにあるのは、誰も語らぬ美しさと、命の厳しさ。
ユノは自然と孤独の“本当の静けさ”に触れる――。

※本記事の物語・アイデアは、AI(ChatGPT)の支援のもと創作されました。すべての内容はフィクションです。

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